立教で広がった世界への視野。海外での被災経験をもとに災害対応に「女性の視点」を取り入れる
内閣府男女共同参画局 藤田 昌子 さん
2026/05/15
立教卒業生のWork & Life
OVERVIEW
地震や台風などさまざまな大規模災害にさらされ続ける日本。大きな被害を受け、極限状態に置かれる非常時ほど、社会が抱えている課題が浮き彫りになる。ジェンダー問題もその一つだ。
内閣府のシンボルマークをバックに。2枚の木の葉と木漏れ日がモチーフ
「東日本大震災をはじめこれまでの災害では、特に避難所の運営に関してさまざまな問題が起こりました。更衣室や授乳室が足りず、プライバシーが守られない。トイレ、シャワーが十分に確保されておらず、衛生環境が悪化する。炊き出し労働が女性に偏る。性暴力の防止策が整っていない。こうした問題が起きていても、非常時には他のことが優先され、女性の視点は後回しにされがちです。そのため、平時から女性の視点に立った防災対策に取り組むことが大切です」
そう語るのは、内閣府男女共同参画局に勤務する藤田昌子さん。防災?復興における男女共同参画を推進するため、調査や研修の実施などに奔走している。
「これまで災害時の避難所では、管理責任者やスタッフの多くが男性でした。また、地域の防災組織や町内会のリーダーも男性が多く、女性の声が届きにくい状況がありました。そうした現状を打開し、女性の困難を軽減することは、災害対応力の強化につながります」
藤田さんは、幼い頃から、マザー?テレサや日本人初の国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんに憧れを抱いていた。国境を越えて人の役に立ちたいという思いから、進学先として選んだのが立教大学だった。「将来は英語を使って仕事をしたいという目標があったので、国際性に優れ、英語教育が充実している立教を志望しました」と振り返る。
特に印象に残っている科目が、通訳者として卓越した実績を持つ鳥飼玖美子先生(現名誉教授)の授業。「英語で時事問題を学んだことで、より世界に目が向くようになりました」と話す。
1年次に全学共通カリキュラム「海外文化研修」(当時)でアメリカ?ベセル大学に4週間の短期留学をしたことも、藤田さんの人生を左右する経験となった。それがきっかけで、本格的な長期留学に挑戦したいという思いが芽生えたのだ。
そう語るのは、内閣府男女共同参画局に勤務する藤田昌子さん。防災?復興における男女共同参画を推進するため、調査や研修の実施などに奔走している。
「これまで災害時の避難所では、管理責任者やスタッフの多くが男性でした。また、地域の防災組織や町内会のリーダーも男性が多く、女性の声が届きにくい状況がありました。そうした現状を打開し、女性の困難を軽減することは、災害対応力の強化につながります」
藤田さんは、幼い頃から、マザー?テレサや日本人初の国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんに憧れを抱いていた。国境を越えて人の役に立ちたいという思いから、進学先として選んだのが立教大学だった。「将来は英語を使って仕事をしたいという目標があったので、国際性に優れ、英語教育が充実している立教を志望しました」と振り返る。
特に印象に残っている科目が、通訳者として卓越した実績を持つ鳥飼玖美子先生(現名誉教授)の授業。「英語で時事問題を学んだことで、より世界に目が向くようになりました」と話す。
1年次に全学共通カリキュラム「海外文化研修」(当時)でアメリカ?ベセル大学に4週間の短期留学をしたことも、藤田さんの人生を左右する経験となった。それがきっかけで、本格的な長期留学に挑戦したいという思いが芽生えたのだ。
大学1年次、「海外文化研修」の様子。ホストファミリーと一緒に。
大学1年次、「海外文化研修」の様子。帰国前の集合写真。
立教卒業後に海外の大学院へ進学することを見据えていた藤田さんは、在学中から国際連合広報センター※でインターンシップを開始。豊富な国際経験を持つ国連職員やインターン生から大きな刺激を受け、「将来は国際協力に携わりたい」という明確なビジョンが定まった。そして、卒業後はイギリスの大学院で国際関係学の学びに没頭。
※国際連合広報センター(UNIC):国連の幅広い活動を紹介する機関。東京オフィスは1958年に北東アジアで唯一のUNICとして設置された。
「英語で新しい分野を学ぶのは想像以上に困難で。辛くて、涙を流したことも度々ありました。でも、それを乗り越えたことが大きな自信につながったと思います」
※国際連合広報センター(UNIC):国連の幅広い活動を紹介する機関。東京オフィスは1958年に北東アジアで唯一のUNICとして設置された。
「英語で新しい分野を学ぶのは想像以上に困難で。辛くて、涙を流したことも度々ありました。でも、それを乗り越えたことが大きな自信につながったと思います」
平常時にできないことは、災害時にはなおさらできない
ネパール大地震の被災経験からジェンダーと防災に目を向ける
大学院を修了し、帰国した藤田さんは日本ユニセフ協会に就職。そこで取り組んだのが、児童買春などの性的搾取から子どもを守る活動だ。
「意識啓発のためのシンポジウムや、メディアを通じて広報活動に関わりました。児童買春?児童ポルノ禁止法の改正を目指したアドボカシー活動では、地道な活動が実り、7カ月で100万筆以上の署名を集めることができました」
11年には、ユニセフ東ティモール事務所に勤務。紛争後も政情不安が続く同国で、子どもの保護担当官として啓発活動などを行った。その後、外務省の調査員、在パキスタン日本大使館の専門調査員などを経験。そして、15年に転機となる出来事が起きる。
「夫がユニセフネパール事務所に勤務していたため、私も同行しており、その時に発生したネパール大地震で被災したのです。私自身、妊娠中でしたが、他の妊婦や子どもたちが劣悪な状況に置かれていたり、雇用が不安定な女性が職を失ったりするのを目の当たりにし、ユニセフに直談判して緊急復興支援に携わることに。その時に初めて、ジェンダーと防災を意識するようになりました」
その後、国際協力機構(JICA)のジェンダー平等?貧困削減推進室に勤務し、本格的にジェンダーと防災の問題に取り組む。そして、20年に内閣府男女共同参画局の専門職に公募で抜擢される。
「防災関連の政策に女性の視点を織り込むための取り組みや、国会答弁の作成など数多くの業務に携わっていますが、最も注力しているのは防災とジェンダーに関する研修です。自治体職員や防災リーダーを対象に、平時からの意識向上を促しています」という藤田さん。研修では「平常時にできないことは、災害時にはなおさらできない」というメッセージを特に強く訴えている。
「能登半島地震の直後に現地に赴き、それを痛感しました。避難所では授乳室などの整備が不十分でも、後からレイアウトの変更はしづらく、現場は大混乱でジェンダーの視点はどうしても後回しになってしまう。しかし、中には理解を示し、積極的に行動してくれる自治体職員や民間団体の職員の方もいました。やはり発信し続けること、連携していくことが重要なのだと気付かされましたね」
「意識啓発のためのシンポジウムや、メディアを通じて広報活動に関わりました。児童買春?児童ポルノ禁止法の改正を目指したアドボカシー活動では、地道な活動が実り、7カ月で100万筆以上の署名を集めることができました」
11年には、ユニセフ東ティモール事務所に勤務。紛争後も政情不安が続く同国で、子どもの保護担当官として啓発活動などを行った。その後、外務省の調査員、在パキスタン日本大使館の専門調査員などを経験。そして、15年に転機となる出来事が起きる。
「夫がユニセフネパール事務所に勤務していたため、私も同行しており、その時に発生したネパール大地震で被災したのです。私自身、妊娠中でしたが、他の妊婦や子どもたちが劣悪な状況に置かれていたり、雇用が不安定な女性が職を失ったりするのを目の当たりにし、ユニセフに直談判して緊急復興支援に携わることに。その時に初めて、ジェンダーと防災を意識するようになりました」
その後、国際協力機構(JICA)のジェンダー平等?貧困削減推進室に勤務し、本格的にジェンダーと防災の問題に取り組む。そして、20年に内閣府男女共同参画局の専門職に公募で抜擢される。
「防災関連の政策に女性の視点を織り込むための取り組みや、国会答弁の作成など数多くの業務に携わっていますが、最も注力しているのは防災とジェンダーに関する研修です。自治体職員や防災リーダーを対象に、平時からの意識向上を促しています」という藤田さん。研修では「平常時にできないことは、災害時にはなおさらできない」というメッセージを特に強く訴えている。
「能登半島地震の直後に現地に赴き、それを痛感しました。避難所では授乳室などの整備が不十分でも、後からレイアウトの変更はしづらく、現場は大混乱でジェンダーの視点はどうしても後回しになってしまう。しかし、中には理解を示し、積極的に行動してくれる自治体職員や民間団体の職員の方もいました。やはり発信し続けること、連携していくことが重要なのだと気付かされましたね」
各地で奮闘する同志の存在が日々を乗り切る原動力に
夫が単身赴任中のため、現在2人の子どもを「ワンオペ」で育てながら働く藤田さん。「テレワークや時短勤務を活用しながら働いています。周りの理解やサポートがあってこそだと思います」と感謝を口にする。
全国各地で奮闘する同志の存在も、大きなモチベーションになっている。「自分がジェンダーと防災の問題に関わるまで、どのような動きがあるのか全く知らなかった」という。しかし「仕事をするうちに、各地で素晴らしい取り組みをされている方々に出会いました。その中には男性の方もいて、とてもうれしい気持ちになりましたね」と笑みを浮かべる。
「同じ志を持つ皆さんの取り組みを、内閣府が好事例として紹介したり、応援したりすることは、課題解決の後押しになります。そうして好循環が生まれ、活動が活発になることに大きなやりがいを覚えます。それを原動力に、今後も『ジェンダー×防災』に関する取り組みをライフワークとして続けていきたいですね」
学生時代は「将来、自分が防災に携わるなんて考えもしなかった」という藤田さん。最後に後輩たちに向けてこんなアドバイスを送ってくれた。
「私は立教大学で国際的な学びに触れ、世界に向けた視野が広がったことで、国際協力の道に進みました。それが、巡り巡って現在の仕事につながっています。どんな経験が未来につながるのかは分かりません。ですから、幅広い物事に関心を持ち、あらゆることに挑戦してほしいですね」
全国各地で奮闘する同志の存在も、大きなモチベーションになっている。「自分がジェンダーと防災の問題に関わるまで、どのような動きがあるのか全く知らなかった」という。しかし「仕事をするうちに、各地で素晴らしい取り組みをされている方々に出会いました。その中には男性の方もいて、とてもうれしい気持ちになりましたね」と笑みを浮かべる。
「同じ志を持つ皆さんの取り組みを、内閣府が好事例として紹介したり、応援したりすることは、課題解決の後押しになります。そうして好循環が生まれ、活動が活発になることに大きなやりがいを覚えます。それを原動力に、今後も『ジェンダー×防災』に関する取り組みをライフワークとして続けていきたいですね」
学生時代は「将来、自分が防災に携わるなんて考えもしなかった」という藤田さん。最後に後輩たちに向けてこんなアドバイスを送ってくれた。
「私は立教大学で国際的な学びに触れ、世界に向けた視野が広がったことで、国際協力の道に進みました。それが、巡り巡って現在の仕事につながっています。どんな経験が未来につながるのかは分かりません。ですから、幅広い物事に関心を持ち、あらゆることに挑戦してほしいですね」
※本記事は季刊「立教」275号(2026年2月発行)をもとに再構成したものです。バックナンバーの購入や定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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プロフィール
PROFILE
藤田 昌子
総務課 専門職
2002年 文学部英米文学科(当時)卒業
東京都出身。立教大学卒業後、イギリス?ランカスター大学大学院ディプロマ課程、ロンドン大学大学院修士課程を修了し、2005年に日本ユニセフ協会に就職。2011年からユニセフ東ティモール事務所で子どもの保護担当官として活動後、外務省や在パキスタン日本大使館に勤務。2015年に夫の赴任地でネパール大地震を経験し、緊急復興支援に取り組む。2017年から国際協力機構(JICA)のジェンダー平等?貧困削減推進室で勤務後、2020年より現職。